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高校生と創る演劇『わたしの星』鼎談企画
 森元隆樹✕柴 幸男✕藤田恭輔【前編】

記事の掲載日: 2026年10月27日

撮影:是永日和


かつての高校生からリアルタイムの高校生へ
演劇界の先輩から後輩へ、受け継がれる名作


PLATが開館2年目より継続して実施して12年。「高校生と創る演劇」が間もなく開幕。2026年は愛知県出身で岸田國士戯曲賞作家・柴 幸男の代表作『わたしの星』に挑みます。藤田恭輔による上演台本・演出のもと、高校生たちはキャストとしてもスタッフとしても日々奮闘。そんな最中『わたしの星』2014年初演・2017年再演の制作統括で演劇評論家の森元隆樹さんを迎え、柴、藤田とともにリモートによる鼎談を開催。同作の誕生秘話や現在稽古中の「とよはし版」について語ってもらいました。


出席者
森元隆樹(演劇評論家・ライター)
柴 幸男(劇作家・演出家/ままごと)
藤田恭輔(劇作家・演出家/かるがも団地)
聞き手:上栗陽子(穂の国とよはし芸術劇場PLAT)


構成・執筆:小島祐未子


上栗 PLATがオープンした2013年に開催された高校演劇の東三河地区大会で、全生徒が集まっている日、劇場の広場に大勢の高校生が車座になって弁当を食べている光景が、東京から豊橋に来た前プロデューサーの矢作勝義さんは強烈に印象に残ったと。この地域には元気な高校生が沢山いる、彼らと作品づくりをするのがよいのではないか、と直感的に思ったそうです。そこで翌2014年から「高校生と創る演劇」というシリーズを始めます。既成戯曲『転校生』(平田オリザ作)と『赤鬼』(野田秀樹作)の二作を除き、新作に取り組んできましたが、市の補助金や助成金など予算面の問題から10年を数えた2024年に一度見直しをすることに。結果、昨年は夏休みに1週間の短期ワークショップとショーイングを実施し好評をいただきましたが、同時に「上演はもうやらないのか」というお声を市民や演劇関係者からいただいたんです。この企画のファンだと言ってくださる方がいることをより実感しました。そこで2026年はアートスペースでの本格上演に向けてあらためて計画をすることになり、だったら名作中の名作をやろうと。その中で真っ先に挙げた作品のひとつが『わたしの星』でした。さらに次の世代へとつなぐためには別の方に演出をお願いして立ち上げるべきだと考えました。柴さんも若い演出家に託したいというご意見で、推薦していただいた方が藤田恭輔さんだったという流れです。
藤田さんはオファーを聞いた時どんなお気持ちでしたか。


藤田 これほどのプレッシャーはないですよね(苦笑)。でも素直に嬉しい気持ちもありました。「高校生と創る演劇」というプロジェクト自体と『わたしの星』という連綿と紡がれてきた名作、その二つに対するプレッシャーは感じましたが、それを凌駕するぐらい「やってみたい」気持ちが湧きました。僕の地元は秋田県で、演劇を始めたきっかけが地域の子どもと大人が一緒になって地域の物語を作るような市民ミュージカルに参加したことでした。今そういう場に携われる機会はめったにないので、ぜひお受けしたいと思いました。

『わたしの星』誕生の経緯を振り返る


『わたしの星』初演 舞台写真(撮影:青木司)


上栗 今回の宣伝美術は、かるがも団地の古戸森陽乃(こともりはるの)さんが担当されました。古戸森さんは三鷹市芸術文化センターで上演された『わたしの星』2014年初演と2017年の再演、どちらも観ていらっしゃるんですよね?

藤田 彼女は東京出身で、高校時代から小劇場が好きで通っていたそうです。初演の頃は古戸森も僕も大学1年生だったので参加できなかったんですが、彼女は公演を観に行ったので話を聞かせてくれて、観られなかった僕も、柴さんたちや『わたしの星』の存在を知ることができました。『わが星』のDVDも借りて、かっこいいなと思って観ましたね。

上栗 演劇活動をされている方から『わたしの星』を人生のいつ・どこで観たかという話はよく聞くので、何かエピソードを語れる作品なのかなと。

柴 『わたしの星』は、三鷹での2回だけでなく大阪や台湾でも長年かけて創ってきたからですよね。『わが星』を観ました、と言ってもらうことは多いですけど、『わたしの星』も結構そう言ってもらうので嬉しいです。

藤田 僕が東京で関わる演劇人の中に、例えば俳優の土本燈子さんや谷川清夏さんがいますが、お二人とも『わたしの星』に参加していたんですよね。今になって「この人もこの人も参加してたんだ!」みたいなことがあるんです。その中にはもともと演劇を続ける気があった人もいるかもしれないけど、『わたしの星』を経てより興味を持ち、演劇の世界に進もうと思った人もいると思う。自分自身は接点がなくても、僕たちの世代は一人介すると『わたしの星』の関係者につながることはありますね。

『わたしの星』2017年再演(撮影:濱田英明)


上栗 初演から12年経ったからこそみえる『わたしの星』立ち上げの経緯をぜひ聞かせていただきたいです。『わが星』を2009 年に発表し岸田戯曲賞を受賞され、同作の再演もされていた状況下でスタートしたとうかがっています。『わが星』と『わたしの星』の関係性も交えてお話いただけますか。


森元 まず、僕は創作中には基本的に何にも言わない人なんですよ。作品は劇団、作家のものだと思っているので、最後の最後まで粘って良い作品を生み出そうとしているんだから途中で何か言っちゃダメだと。でも『わが星』初演のゲネ(最終通し稽古)を観た時は、あまりにも面白いと感じたので、柴さんにテクニカルなことだけは言ったんです。非常灯は消してもいいとか、音楽の音量が大きく声が聞こえにくいから、セリフを聞かせたいんだったらマイクを用意した方がいいとか…。柴さんは本当に時間がなくて、やることが多過ぎてゲネから初日明け数日間の記憶がないとおっしゃっていたことがあります。


柴 まったく記憶がありません⋯。とにかく初日をあけるのに必死でした。

『わが星』初演(撮影:青木司)


森元 そんな状況を経て幕を開けた『わが星』が僕はすごく面白かったので、終わってすぐ再演の企画書を書きました。千穐楽の4日後にはお会いして、再演のご相談をしたこと、柴さんは覚えています?

柴 初演が終わってすぐ打ち合わせした記憶はあります。

森元 だから岸田戯曲賞を受賞されたので再演を提案したわけではないんです。それで2011年4月に再演を行うんですが、直前の3月11日に東日本大震災が起こったことから『わが星』に内在されていた死生観がダイレクトに伝わったみたいで、お客さんのリアクションがすごかった。前売チケットが完売した後は、朝9時に劇場が開くとすぐに当日券を求める列ができて、11時頃には当日券の予定枚数60席ほどが無くなって、以降は全員お帰りいただくことになったくらいたくさんの方が来てくださった。あんな体験は後にも先にもありません。その後さらに大規模な再々演(2014年)のご相談と並行して、2013年頃に柴さんとプロデューサー(当時)の宮永琢生さんに「高校生で『わが星』を上演できないか」と相談したんです。出演者は高校生だけ、スタッフも高校生が担う公演ができないか、しかもプロと同じくらいの入場料をいただく本公演としてやりたいとお願いした。そうしたらすごく考えてくださった上で『わが星』のスピンオフのような『わたしの星』の構想案が届いたんです。

柴 新しいことをやりたかったのと、高校生と創作した後その台本を使って高校生だけでも上演できる作品にしたいという気持ちがあって…。高校の演劇部が上演する場合、『わが星』だと難しいんじゃないかと思ったので、もう少し要素を少なくしたシンプルな形で高校生だけの劇を作りたいと考えたんです。

上栗 『わが星』と『わたしの星』、物語上の設定は異なりますが、絶妙なリンク感がありますよね。学校の音楽室という設定は高校演劇で上演されることを見越した面が大きいですか。

柴 初演の時は一幕物にしたいと強く思っていた覚えがあります。そこに劇中劇として歌やダンスが入る構成にしようと考え、場所はやっぱり学校がいいんじゃないかという発想になったと思います。

森元 公演日程が8月の終わりだったから「夏休みの最後の1日」みたいな設定は早くから出ていましたよね。

上栗 11日間・全12ステージも高校生が出演するのは本当に大変だったと思います。藤田さんはいま本稽古が始まりましたが、実際はいかがですか。

藤田 最初はおっかなびっくりでトライしている子も多かったんですが、徐々にほぐれて、良い意味で肩の力が抜けてきています。昨日も噂話でわちゃわちゃするシーンをやったんですけど、みんなすごく楽しそうに演じてくれて。そのエネルギーは今後どんどん膨らましていけたらいいなと思っています。みんな吸収がすごく早いんですよ。演劇部の子もいますけど、演劇をやったことのない子も半分ぐらいいるので、演技とはどういうものか、声を出すにはどうすればいいかみたいなところからスタートしたんですが、演じることに対して少しずつ楽しさを感じてくれているように思います。僕や演出助手の二人はホッとしながら帰路に就く日々を送ってますね。


高校生と創る演劇『わたしの星』稽古のようす(撮影:萩原ヤスオ)

【後半につづく】

後半「受け継いだ名作は自由度が高過ぎる!?」

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森元隆樹(もりもと・たかき)

演劇評論家。ライター。1994年、三鷹市スポーツと文化財団(東京都)に就職。演劇企画員として、1995年11月の三鷹市芸術文化センターのオープンから2025年3月まで、今後が期待される若手劇団を招聘する「MITAKA "Next" Selection」企画を始めとする数多くの演劇公演の企画・制作を担当。現在、『ぴあ』アプリ&WEBに「演劇の水先案内人」として「今月のお薦めステージ」を毎月執筆するほか、月刊誌『とぶ!ぴあ』に「私の“イチ”推し」を不定期に執筆中。

 

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公演情報および柴幸男・藤田恭輔プロフィールはこちら

2014年〜2024年の「高校生と創る演劇」報告書・公演情報はこちら


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