忘れてはならない時代、占領下を生き抜いた日本人たちの物語。
1948年、戦後すぐに公開された映画、溝口健二監督「夜の女たち」の初の舞台化。戦後間もない大阪釜ヶ崎を舞台に、生活苦から夜の闇に堕ちていった女性たちが、必死に生き抜こうとした姿を描いた作品を、長塚圭史が上演台本、演出を手掛け、初めてミュージカルに挑みます。
溝口健二と映画「夜の女たち」
ヴェネツィア国際映画祭で「雨月物語」が世界的評価を受けた溝口監督は、後年、女性映画の巨匠と呼ばれるほど、一貫して虐げられた女性の姿を冷徹なリアリズムで描き、弱い者たち、とりわけ女性の生き方を、その身に寄り添いながら描いたことに特徴があります。
「わが青春に悔いなし」の久板栄二郎による原作「女性祭」を、依田義賢が脚色し、溝口健二が監督し映画化。戦後間もない大阪釜ヶ崎を舞台に、生活苦から夜の闇に堕ちていった女性たちが、必死に生き抜こうとした姿を描いた作品です。
主演は「女優須磨子の恋」(監督:溝口健二)、「雨月物語」、「楢山節考」など、日本映画史を代表する田中絹代。大女優・田中絹代が初めて汚れ役に挑んだ社会派群像ドラマです。
あらすじ
戦後すぐの大阪、釜ヶ崎。
「日没後、この付近で停立または徘徊する女性は闇の女と認め、検挙する場合 があります」と札が立っている。
大和田房子は焼け出された後、病気の子を抱えて困窮していた。夫は戦地からまだ帰っておらず、両親や妹・夏子は終戦を迎えたものの消息不明になっている。姑や義理の妹・久美 子と同居しながら、着物を売り払ってなんとか暮らしている。
そこに届いたある知らせに絶望する房子。その後、ダンサーとなった夏子と偶然再会する。
房子、夏子、久美子、3人の女たちの壮絶な人生と、凄まじい生命力を描いた人間ドラマ。